2006年08月20日
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さらば宇宙戦艦ヤマト再分析序論・藤堂長官は武力クーデターを準備していたという仮説

Written By: トーノZERO連絡先

 映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」を再び分析の対象にしてみようという時代錯誤な企画。まずは、序論として気が付いた部分から手を付けて行こうと思います。間違い、勘違い、異論、反論などは上記メールアドレスかtestml4までお寄せ下さい。

斉藤と空間騎兵隊の特異性 §

 ヤマトによる謀反の担い手は、元ヤマト乗組員です。

 しかし、1つだけ例外があります。

 それは斉藤と空間騎兵隊です。

 彼らは、元ヤマト乗組員ではありません。

 当初、佐渡によるスカウトと説明され、後から藤堂によって派遣されたものと明らかになります。

 さて、ヤマトの謀反は非常に短い期間で突発的に決まったことです。明確にどの程度の期間かは描かれていませんが、旧地球防衛軍司令部で古代が謀反を決意してからヤマト乗り組みのシーンになるまで、雪が古代の着替えを取ってくる必要があるぐらい短い時間でした。おそらく、ヤマト発進が翌朝で、1日は掛かっていないというのが妥当な推測ではないかと思います。

 この短い期間で、以下の作業が完了したことになります。

  • 藤堂は、斉藤と部下をヤマトに乗せる必要性を決断した
  • 藤堂は斉藤に謀反に加わるように説得した
  • 斉藤は謀反に加わることを部下に説得した
  • 斉藤と部下がスムーズにヤマトに乗り組めるよう、藤堂は佐渡を説得した

 これらの作業が全て短期間に完了したと考えるのは、かなり無理があるように思われます。

ヤマトの謀反は藤堂によって計画された §

 上記の「無理」は、あくまでヤマト乗組員が主導権を握っているという前提の話です。

 実は、ヤマトの謀反は、藤堂による意図的な誘導により古代らを煽ることで発生したものです。ヤマトを廃艦にすると言ったり、元ヤマト乗組員をヤマトから遠ざけたり、しかも「命令に説明はない」という冷たく突き放した言い方をして、幼い少年達から正常な判断力を奪い、過激な行動に突っ走らせています。しかも、冷静になって考える時間を与えないために、非常に短い期限を切っています。

 そのように考えると、実は「無理」が大幅に緩和されます。

 つまり、古代らが謀反を決断する前から、斉藤への働きかけを始めることができるからです。

 しかし、まだ十分ではありません。

 藤堂が古代らに謀反の可能性を見出すのは、防衛会議のあたりだと思われますが、おそらくそれは謀反の決断と同日の出来事です。まだ全てを行うには時間が足りません。

地球防衛軍に2つの派閥が存在する仮説 §

 防衛会議を見る限り、地球防衛軍内には決定的に対立する2つの派閥が存在するように思えます。

 1つは、古代を冷たく扱った者達で、極めて利己的な人たちと言えます。これを便宜上、利権派と呼びましょう。

 もう1つは、古代の意図を理解した藤堂です。防衛会議には、藤堂一人しかいなかったようですが、地球防衛軍の組織内には理解者や味方がいたでしょう。ゆえに、これも1つの派閥と考えられます。これを便宜上、藤堂派と呼びましょう。

 地球防衛会議の構成から見て、利権派に対して、藤堂派は圧倒的に劣勢に追いやられていると見て良いでしょう。しかし、このまま利権派に主導権を与え続けることに理はありません。自分たちの利益と安全のことしか考えない彼らに地球防衛軍を任せておくことは、地球の繁栄に水を差すことになりかねないからです。実際、宇宙の資源に依存する地球の繁栄を維持するには、少なくとも地球近傍の宇宙を含む安全が必要とされますが、利権派は敵が来たら迎え撃てばよいという粗雑な防衛意識しかありません。積極的に、安全を脅かすリスク要因を事前に調査、排除するという発想がありません。

 そのような問題点を、きちんと問題意識として持っていたのが藤堂派でしょう。

非正規手段による反撃の可能性 §

 しかし、藤堂派がいくら問題意識を持ったところで、防衛会議で圧倒的に劣勢では問題意識を実際の地球防衛軍の行動に反映させることができません。

 ということは、正規の組織のルートから逸脱した形で、問題意識に応える、つまり有事に即応する体制を用意していたと考えるのは自然な成り行きでしょう。

 その場合の対処には様々なバリエーションがあり得ます。たとえば、血気盛んな若者をけしかけて、命令違反の行動に誘導するとか。最悪の状況では、軍事クーデターのような武力行使も想定され、そのための準備も行われていたと考えて良いと思います。

藤堂の私兵としての斉藤と空間騎兵隊 §

 このように考えるなら、斉藤と空間騎兵隊の位置づけが見えてきます。

 それは、藤堂派の私兵なのです。地球防衛軍の命令系統ではなく、藤堂個人の命令で動く部隊です。陸戦隊としての空間騎兵隊は、軍事クーデターにおいて利権派を拘束し、行動の自由と権限を奪うためにはもってこいの存在です。

誰が藤堂派か? §

 とすれば、藤堂以外の誰が藤堂派なのかは、斉藤のヤマト乗り組みのカラクリを知っていたかどうかで推測することができます。

 つまり、斉藤をヤマトに乗せた佐渡も藤堂派です。

 おそらく、藤堂本人、佐渡先生、斉藤と空間騎兵隊は明らかに藤堂派と見なして良いと思います。

 ここで気になるのは藤堂の秘書である雪の存在です。彼女が藤堂派であったかどうかは明確な証拠がありません。しかし、彼女も藤堂派であった可能性は高いと考えます。藤堂の信頼も厚く、秘書を務めていた才媛ですから、藤堂が彼女をあてにしていた可能性は十分にあり得ると思います。

 逆に、ヤマトを発進を止めようとした藤堂の副官は、藤堂派であることはあり得ず、利権派に所属すると見て良いでしょう。

 では、古代ら、佐渡と雪を除く他の元ヤマト乗組員達はどうでしょうか?

 彼らは、斉藤のカラクリを知らなかったという意味で、藤堂派ではなかった……と考えるのが妥当だと思います。もちろん、彼らは利権派でもありません。若く純情な彼らの立場は、軍によって便利に使われる手駒です。

まとめ §

 以上をまとめると以下のようになります。

  • 地球防衛軍には利権派、藤堂派の2つの派閥と、派閥争いに無縁の手駒としての者達が存在した
  • 利権派が圧倒的優勢だが、彼らでは地球の繁栄を守れない
  • 藤堂派は、有事には軍組織の秩序を逸脱した行動を取るための準備を進めていた
  • 斉藤と空間騎兵隊はそのための手段として藤堂派の私兵となった
  • テレサの通信によって、地球近傍に危機が存在する可能性が指摘された
  • 藤堂は、元ヤマト乗組員を挑発し、超法規的行動に出ざるを得ない状況に追い込んだ
  • 藤堂は、ヤマトの行動の支援と、おそくは古代らが藤堂の意図を逸脱した行動に出ないよう、斉藤と空間騎兵隊をヤマトに乗り組ませることを決断した
  • 藤堂の私兵である斉藤と空間騎兵隊は、藤堂の命令1つでヤマトに乗り組んだ
  • 佐渡は、斉藤の真の立場を古代らに知られないように、カモフラージュとして「自分がスカウトした」という作り話をした

 つまり、古代らは藤堂の思惑にまんまと乗せられて飛び出した……ということになります。そのカラクリを、佐渡、斉藤、そしてもしかしたら雪は知っていたことになります。

 しかし、藤堂を黒幕として背負ってヤマトが航行する状況は、少なくともテレサとの遭遇で終わりを告げます。テレサは、ヤマトが航行する理由を完全に塗り替えてしまう「宇宙の愛」というテーマをヤマトに課してしまうからです。

残された宿題 §

 土方は藤堂派であるか? 土方が藤堂派であるとすれば、あまりにすんなりヤマトの艦長席に座った理由が明確になるかも?

 仮に雪が藤堂派だったとすれば、愛する男を道具として使う派閥に所属したことになる。その心情とはいったい? 雪は古代が道具であることを古代に語ったか?

 古代は、自分が藤堂に上手く使われたことに気付いていたか? 気付いたとして、それに対してどのような気持ちになっただろうか?

宇宙戦艦ヤマト

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